公務員が直面するカスハラ問題とは|対策方法や効果的な対応方法を解説

「カスタマーハラスメント(通称:カスハラ)」という言葉が広く知られるようになった近年、公務員に対する悪質な言動や行為も社会問題化しています。
総務省の調査によると、自治体職員の3人に1人以上がカスハラを経験しており、その影響は職員のメンタルヘルスや業務効率にとどまらず、行政サービス全体の質にも波及しています。
公務員のカスハラ問題が深刻化する背景には、住民からの過剰な「正義感」や社会的ストレスのはけ口としての利用といった要素も関係しています。
本コラムでは、現状の調査データをもとに、地方自治体や公共機関で頻発するカスハラの実態、背景にある社会的要因、そして現場でできる具体的な対策とその効果について解説いたします。
▼カスハラについてはこちらもご覧ください。
【事例あり】カスハラ(カスタマーハラスメント)対策とは?義務化についても解説
公務員が直面するカスハラ問題の現状
まずは、公務員が直面するカスハラ問題の現状から見ていきましょう。
カスハラとは何か?
そもそもカスハラ(カスタマー・ハラスメント)とは、利用者や住民などの顧客が、理不尽な要求や暴言、威圧的な態度を取ることにより、対応する職員の尊厳を損ねたり精神的な苦痛を与えたりする行為を指します。
近年では、厚生労働省や総務省がその定義を明文化し、企業や自治体に対して防止策の整備を呼びかけるなど、社会全体での問題意識が高まっています。
なお、厚生労働省や総務省のカスハラの定義は、次の通りです。
顧客からのクレーム・言動のうち、当該グレーム・言動の要求の内容の妥当性に照らして、当該要求を実現するための手段・態様が社会通念上不相応なものであって、当該手段・態様により、労働省の就業環境が害されるもの
従来、企業のカスタマーサポート部門や接客業において問題視されていたカスハラは、公共サービスの提供現場である役所窓口や電話応対、福祉部門などでも日常的に発生しており、公務員にとっても深刻な業務上のリスクとなっています。
カスハラについて詳しくは、下記の記事もご覧ください。
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公務員におけるカスハラの発生状況
総務省が2024年に実施した全国調査(地方公共団体を対象)によると、自治体職員のうち35.0%が「過去3年間にカスハラを受けた経験がある」と回答しています。
この割合は、2023年度に民間企業や団体におけるカスハラ発生率(10.8%)と比較しても約3倍以上という高水準であり、公務員が日常的にカスハラにさらされていることが明らかになりました。
さらに、同調査では、被害を受けた職員の42.6%が「年に数回以上」カスハラを経験していると回答しており、一過性ではなく継続的な被害である実態も浮き彫りになりました。
また、内容として最も多かったのは「行政サービスの利用者・取引先の不満のはけ口・嫌がらせ」で72.5%となっています。
また、カスハラの被害が最も多かった部門は「広報広聴担当」で、次いで「各種年金保険関係」「福祉事務所」などの相談窓口部門が続いています。
これは、住民側のストレスや切実な生活課題が、過剰な要求や理不尽な態度に変化しやすいためだと考えられています。
出典:35.0%の自治体職員が過去3年間でカスハラを受けた経験
――総務省が「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート調査報告書」を公表(独立行政法人 労働政策研究・研修機構)
公務員特有のカスハラ事情
公務員が直面するカスハラは、民間企業と比べてより対処が難しいという特有の事情があります。
主な要因としては、以下のような点が挙げられます。
- 全住民に対して公平に対応する義務があるため、顧客を選べない
- 「税金で給料をもらっている」との誤解から、過剰な権利意識に基づく攻撃を受けやすい
- 行政サービスの性質上、申請拒否や説明責任が生じることでトラブルが発生しやすい
この点については、次章で詳しくお伝えします。
公務員のカスハラが発生する背景・原因
公務員に対するカスハラが発生する背景・原因について、少し詳しく見ていきましょう。
公共サービスに対する過度な期待
公務員が提供する行政サービスは、住民の生活に直結するものであり、福祉・税務・戸籍・住民票の発行など、日常的に利用頻度の高い業務が多く含まれます。
そのため、住民からの期待や要望が非常に高くなる傾向があります。
しかし、すべての要望に対して即時かつ柔軟に対応できるとは限らず、制度上の制限や手続き上の制約から、対応が難しいケースも少なくありません。
こうした「期待と現実のギャップ」が住民側の不満を生み出し、理不尽なクレームや暴言といったカスハラ行為へと発展すると考えられます。
また、近年はインターネットやSNSの普及により、行政サービスの遅延や対応への批判が容易に拡散される環境が整っており、それが現場のプレッシャーをさらに強めています。
「窓口対応が遅い」「説明が不十分」といった一方的な主張がクレームとなり、職員個人への非難に発展するケースも散見されます。
税金で運営されているという意識
「自分たちの税金で運営されているのだから、もっと丁寧に対応すべきだ」といった権利意識が、公務員への過剰な要求につながることもあります。
これが時に“正義感”や“上から目線”の態度を助長し、通常の対応を超えた無理な要求や執拗なクレームを引き起こす要因となっています。
このような意識は、特に年齢層の高い住民や、制度に不満を感じている人々に強く見られる傾向があります。
また、これらのケースでは、制度への不満が本来向けられるべき行政全体ではなく、対応する現場職員個人にぶつけられるため、精神的ダメージが大きく、カスハラ問題の根深さを浮き彫りにしています。
カスハラが公務員組織に与える影響
では、住民からのカスハラが公務員組織に与える影響には、どのようなものがあるでしょうか?
職員のメンタルヘルスへの影響
カスハラによって最も深刻な影響を受けるのが、職員の精神的健康です。
総務省の調査では、カスハラを受けた職員の約8割が「怒りや不満、不安を感じた」と回答しており、一過性のストレスではなく、慢性的な心的負荷へとつながる危険性があります。
特に、暴言や威圧的態度が継続的に繰り返される「執拗な言動」タイプのカスハラは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に近い状態に陥る恐れがあり、対応する職員の精神的なダメージは無視できません。
業務効率の低下
精神的な負担を抱えた状態では、当然ながら通常業務のパフォーマンスにも影響が出ます。
たとえば、
- 対話を避けるようになる
- 判断ミスが増える
- 業務スピードが落ちる
といった変化が起こりやすくなると考えられます。
また、カスハラは直接的にも業務効率を悪化させる要因となります。
カスハラ対応には多くの時間と労力がかかるため、ほかの業務への影響も大きく、結果として業務全体の効率が低下する傾向があるためです。
これが、ひいては組織としての生産性や行政サービスの質にもつながります。
離職率の増加と人材確保の困難
精神的ダメージが蓄積された結果として、職場への不信感や無力感から早期退職や異動希望の増加が起こるリスクも考えられます。
特に若手職員においては、「公務員=理不尽なクレームに晒される職業」というネガティブな印象が定着してしまい、長期的なキャリア形成を断念する要因ともなり得ます。
人手不足が問題になっている昨今、こうした離職傾向は採用コストの増加や職員一人あたりの業務負荷の増大という悪循環を招いてしまいます。
効果的なカスハラ対応方法
こうした悪影響を避けるためには、本腰を入れてカスハラ対策に取り組む必要があります。
ここでは、効果的なカスハラ対応方法を4つの観点からご紹介します。
初期対応のポイント
カスハラへの対応で最も重要なのは、初動を誤らないことです。
理不尽な要求や暴言に対して、感情的に応じたり、無理にその場で解決しようとしたりすると、かえって状況を悪化させることになりかねません。
初期対応では、以下のような点に注意しましょう。
- 冷静かつ毅然とした態度を維持する
- 対応内容や相手の言動を正確に記録する
- 対応が困難と判断した場合は、すぐに上司へエスカレーションする
また、一人で対応させない体制づくりも重要です。
カスハラの多くは「相手が弱い立場」と見なした時に強まる傾向があるため、複数人で対応することによって、相手に対して冷静な抑制効果が生まれます。
エスカレーション手順の確立
現場職員が無理に対応を続けるのではなく、段階的なエスカレーションフローをあらかじめ整備しておくことで、職員の心理的な負担を軽減できる効果が期待できます。
- 一次対応…窓口担当者
- 二次対応…係長・課長などの上司
- 三次対応…法務・人事・外部機関(弁護士など)
このように、対応レベルを明確に定義しておくことで、職員が「自分だけで抱え込む必要がない」と安心して業務に集中できるでしょう。
録音・記録の重要性
カスハラ対応においては、「証拠を残す」ことも重要です。
特に電話応対や窓口でのやり取りにおいては、後日のトラブル回避や第三者機関への相談時に、客観的な証拠として録音記録が有効になります。
また、対応内容を記録することで、同様のケースが発生した際に参考資料として活用でき、組織全体での対応レベルの向上にも寄与します。
関係部署との連携体制
現場だけでの対応には限界があるため、人事・法務・内部監査部門など、組織内の複数部門との連携が不可欠です。
特に、対応が長期化するケースや訴訟リスクが想定される場合には、法務担当や外部の弁護士との早期連携が有効です。
また、産業医やカウンセラーなどと連携し、精神的に影響を受けた職員へのメンタルケアを行う体制づくりも必要です。
公務員組織で実施すべきカスハラ対策
公務員に対するカスハラ対策として実施すべき取り組みを、さらに詳しく見ていきましょう。
ポスターやHP、広報誌などでのカスハラ対策の周知
カスハラを未然に防ぐためには、まず、外部に向けた明確な意思表示が重要です。
多くの自治体では、庁舎内の掲示スペースや各種広報媒体(市報・町報・HP等)を活用し、「不当な要求や暴言には応じません」と明記した注意喚起ポスターや案内文を掲出しています。
これにより、住民に対して「適正な対応の範囲」を伝えるとともに、「職員を守る姿勢」を組織として表明することができます。
また、外部からのクレームの抑止効果や、カスハラ行為への牽制的な効果も期待されます。
たとえば、以下のようなメッセージが考えられます。
「不当な要求・暴言には対応いたしません」
「通話内容は録音させていただいております」
「すべての職員が安心して働ける職場環境づくりにご協力ください」
広報媒体やホームページでの継続的な発信も、住民の意識を変える第一歩となるでしょう。
職員研修・教育プログラムの充実
現場の職員一人ひとりが、カスハラ対応についての適切な知識と対応スキルを身につけておく必要があります。
そのために重要なのが、体系的な職員研修・教育プログラムの整備です。
研修では、以下のようなテーマを盛り込むと良いでしょう。
- カスハラの定義と典型的な事例の共有
- 初期対応の基本と心構えを知る
- エスカレーションの運用方法を身に付ける
- 感情のコントロールやストレスマネジメントを身に付ける
ロールプレイを取り入れた実践的な研修を行うことで、対応力の向上と共に、不安の軽減にもつながります。
マニュアル・ガイドラインの整備
職員研修とセットで整備すべきなのが、組織全体で共通して使用できるマニュアルやガイドラインの策定です。
マニュアルには、以下のような内容を含めると効果的です。
- 「正当な苦情」と「カスハラ」の違いを明確に区別
- カスハラ応対時のフレーズや対応例
- 記録の取り方・保存方法
- 対応できない場合の断り方
相談窓口の設置
カスハラ対応は、現場職員のメンタルヘルスに大きな負担をかけるため、内部・外部の相談窓口の設置も非常に重要です。
- 組織内の窓口…人事部門やコンプライアンス室などへの相談ルート
- 外部の窓口…自治体の外部相談員、労働組合、カウンセラー、法律専門家などとの連携
相談しやすい雰囲気づくりと、プライバシーに配慮した仕組みが整っていれば、職員は孤立感を抱かずに支援を受けることができます。
技術的対策|通話録音システムの導入
組織的な仕組みに加えて、ICTを活用した技術的な対策も導入することで、より実効性の高いカスハラ対応が可能になります。
たとえば、通話録音システムの導入によって、電話応対時の言動を記録として残すことができます。
録音されたデータは、クレームの検証や事実確認に活用できるだけでなく、職員を理不尽な対応から守る“抑止力”にもなります。
CallKeeperDXによるカスハラ対策支援
公務員組織がカスハラ対策を実効性のあるものにするためには、組織的な制度整備や教育だけでなく、ICTツールの導入による技術的支援が不可欠です。
なかでも、通話録音システム「CallKeeperDX(コールキーパーディーエックス)」は、公務員が直面するカスハラ問題への対応力を高める強力なツールです。
録音予告による、カスハラの未然防止
自治体の電話応対において、「この通話は録音されます」といったアナウンスを流すことで、発信者(市民)は自分の言動が記録に残ることを意識し、冷静さを取り戻したり、過激な言動を控えたりといった心理的なブレーキがかかる効果が期待できます。
- 感情的な暴言や威圧的態度の発生率低下
- クレームの内容が冷静かつ論理的になる
- 通話後のトラブルへの発展リスクを軽減
これにより、カスハラを未然に防止できる効果が期待できます。
録音予告は、職員を守るだけでなく、住民との健全なコミュニケーション促進にもつながります。
通話録音機能でのエビデンス確保
カスハラにおけるトラブル対応では、「誰が・いつ・どんな言動を行ったか」という客観的な記録=エビデンスが重要になります。
CallKeeperDXは、すべての電話応対を自動で録音し、その音声データを安全に保管・管理できます。
これにより、住民側の言動や職員の対応内容を正確に振り返ることができ、以下のような場面で活用可能です。
- クレーム対応時の事実確認
- エスカレーション時の情報共有
- トラブルの再発防止策の検討材料
まとめ
公務員が直面するカスタマーハラスメント(カスハラ)の問題は、近年ますます深刻化しています。
この背景には、「公共サービスに対する過度な期待」や「税金で運営されているという誤解」など、住民側の過剰な権利意識が存在しています。
こうした構造的な問題に対しては、組織的かつ多面的な対応が不可欠です。
自治体や公共機関が、単なる「苦情処理」ではなく、持続可能な行政運営と人材の確保のために、カスハラ問題に真剣に向き合うことが、今後ますます求められていくでしょう。
著者情報

辻 周平
扶桑電通株式会社 ビジネス推進本部
企画部 パッケージ推進課 チーフ
1982年生まれ 香川県出身。2010年扶桑電通株式会社入社。同社関西支店にて運送、製造業界を担当する営業としてお客様の業務課題の解決に向けたICTの導入を数多く経験。
その後2020年に現在のマーケティング職に異動し、お客様の電話を使った業務やカスタマーサポートのプロセスの最適化や効率化、利便性向上等電話業務全般に関わるコンサルティングに従事。日々お客様の電話業務にまつわる課題解決に取組んでいる。






