扶桑電通株式会社
クラウドPBXの導入において、通話品質の要となるのが「ネットワーク帯域」の確保です。多様な働き方の普及により移行が進む一方で、「導入して初めてネットワーク環境の力不足に気づき、通信トラブルに悩まされている」という企業は少なくありません。
結論からお伝えすると、クラウドPBXをストレスなく利用するためには、「1通話あたり約100kbps」の帯域確保と、遅延・パケットロスを防ぐための総合的なネットワーク環境の整備が必要不可欠です。どれほど高機能なシステムでも、事前の帯域計算やインフラ設計が不十分だと、「音声の途切れ」や「遅延」が発生し、日々の業務や顧客対応に大きな支障をきたしてしまいます。
本記事では、クラウドPBXの導入で失敗しないために事前に押さえておくべき「通信量の計算式」から、クリアな音質を保つための「環境構築のポイント」までを分かりやすく解説します。
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クラウドPBXの通話品質は、利用するインターネット回線の「帯域」によって大きく左右されます。ここでは、帯域が果たす役割と不足した際のリスクについて解説します。
クラウドPBXにおけるネットワークの仕組みは、インターネット回線を「道路」、音声データを「車」に例えると理解しやすくなります。このとき、「帯域」とは道路の車線の数や幅を指す言葉です。
車線が広ければ広いほど、多くの車(音声データ)がスムーズに行き交うことができます。逆に、道路が狭いにもかかわらず大量の車が押し寄せると、渋滞が発生して目的の場所に時間通りにたどり着けなくなります。
帯域(道路の幅)が不足すると、音声パケット(車)がネットワーク上で渋滞を起こし、結果として「音声の途切れ」「遅延」「ノイズの混入」といった通話トラブルに直結します。
こうしたトラブルは、単なる機器の不具合で済まされる問題ではありません。顧客対応中の音声トラブルは、顧客に不快感を与えクレームにつながる恐れがあるほか、社内コミュニケーションにおいても聞き返しが増え、業務効率の低下という見えないコストを発生させます。快適な通話環境は、事業を円滑に回すための生命線といえます。
クラウドPBXの導入にあたって事前に把握しておきたい、通信量の目安について解説します。通話に必要なデータ量に加え、音質を左右する圧縮方式との関係性についても確認しておきましょう。
クラウドPBXを快適に利用するための必要帯域は、上り(送信)・下り(受信)ともに「1通話あたり約80kbps〜100kbps(0.1Mbps)」が目安となります。
文字にするとごくわずかなデータ量に見えるかもしれませんが、音声通話はリアルタイム性が命であるため、この「100kbps」の通り道を常にクリアな状態で確保し続けることが重要です。
外出先などでスマートフォンのモバイルデータ通信を利用してクラウドPBXを利用する場合、データ消費量が気になる方も多いでしょう。
目安として、1時間連続で通話した場合のデータ通信量は「約30MB〜45MB程度」となります。一般的なWeb会議システムや動画視聴と比べると非常に軽く、一般的なスマートフォンの定額プランであれば、通信量制限を過度に気にする必要はない水準です。
通話に必要な帯域は、システムが採用している「コーデック(音声圧縮方式)」によっても変動します。固定電話と同等のクリアな音質を実現する「G.711」という標準的な規格の場合、前述の約100kbpsが目安です。
一方で、データ通信量を抑える「G.729」などの圧縮率が高い規格を採用している場合、1通話あたりの帯域は約30kbps〜40kbps程度で済むこともあります。ただし、データ量を抑える代わりに音質がやや犠牲になる傾向がある点には留意が必要です。
自社のネットワーク環境に適した帯域を把握するためには、実際の業務状況に合わせた計算が必要です。ここでは、基本となる計算式と企業規模別のシミュレーション例を解説します。
自社のオフィスにどれくらいの帯域が必要かを算出するには、従業員の総数ではなく「ピーク時に同時に何人が通話するか(同時通話数)」をベースに計算することが鉄則です。
計算式:同時通話数(ピーク時) × 100kbps + ゆとり(マージン)
業務の特性上、特定の時間帯に電話が集中する場合は、その最大の同時通話数を想定して計算を行ってください。
| 企業規模 | 同時通話数の目安 | 必要な音声用帯域 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 小規模オフィス | 5〜10件 | 0.5Mbps〜1Mbps | 一般的な光回線で十分カバー可能なケースが多い |
| 中規模オフィス | 30〜50件 | 3Mbps〜5Mbps | PCのデータ通信が回線を圧迫し始めるためQoS等の対策が必要 |
| 大規模・コールセンター | 100件〜 | 10Mbps以上 | ベストエフォート型では限界。帯域確保型の専用線などを推奨 |
帯域幅をいくら広く確保しても、以下の3つのネットワーク指標が悪化していると、通話品質は著しく低下します。
Ping値とは、データが相手に到達して返ってくるまでの「応答速度」のことです。この値が大きい(遅延が長い)と、会話のタイミングがズレてしまい、お互いの声が被ってしまうタイムラグが発生します。自然な会話を成立させるためには、Ping値は「150ms(ミリ秒)以下」に抑えるのが理想的です。
ジッターとは、音声データのパケットが届く間隔の「ズレ(揺らぎ)」を指します。パケットが一定の間隔で届かず、バラバラのタイミングで到着すると、機械音のような歪みやエコーが発生します。快適な通話のためには、ジッター値は「30ms以下」を維持することが推奨されています。
パケットロスとは、送信したデータの一部がネットワーク上で消失してしまう現象です。音声データの一部が欠損するため、「声がブツブツと途切れる」「言葉の頭が聞こえない」といったトラブルの直接的な原因となります。ビジネスで利用するクラウドPBXの場合、パケットロス率は「1%未満」を厳守する環境構築が求められます。
クラウドPBXの音質は、利用する回線や社内ネットワークの構成を工夫することで大きく改善・安定させることができます。具体的な4つの対策を見ていきましょう。
オフィスで利用するインターネット回線は、混雑に強い法人向けのプランを選ぶことが重要です。通信速度が時間帯によって変動する「ベストエフォート型」を利用していて音質が安定しない場合は、通信経路が混雑しにくい「IPoE方式(IPv6)」の回線へ切り替えるか、一定の速度が約束される「帯域確保型」の導入を見直すことをおすすめします(特に先述の大規模オフィスやコールセンターなどでは必須の対策となります)。
QoS(Quality of Service)とは、特定の通信データを優先して処理させる機能のことです。高機能なビジネス用ルーターに搭載されており、この設定を有効にすることで、誰かが大容量ファイルのダウンロードを行って回線が混雑しても、「音声通話のパケット」を常に優先して通すことができ、音質の劣化を防げます。
社内ネットワークを構築する際、PCなどの「データ通信用ネットワーク」と、IP電話機などの「音声通信用ネットワーク」をVLAN機能等で論理的に分離する手法も極めて有効です。これにより、PC側のトラフィック負荷が電話の通信に干渉するのを防ぎ、クリアな通話環境を維持できます。
無線通信であるWi-Fiは、電波の干渉やオフィスのレイアウト、電子レンジなどの影響を受けやすく、パケットロスやジッターが発生しやすい傾向があります。オフィスの固定端末を利用する場合は、極力「有線LAN接続」を優先してください。
【スマホ内線(FMC)利用時の注意点】
スマートフォンを内線端末として利用する場合、オフィス内を移動しながら通話すると、複数のWi-Fiアクセスポイントをまたぐ際に「ハンドオーバー(接続先の切り替え)」が発生し、通話が一瞬途切れたり切断されたりするリスクがあります。スマホで安定した通話を行う場合は、ローミングに強い法人向けWi-Fi機器を導入するか、社内でもあえて携帯キャリアの4G/5G回線(モバイルデータ通信)を利用するといった対策が有効です。
自社のネットワーク環境を整えることと同様に、どのクラウドPBXサービスを利用するかも音質を左右する重要な要素です。
クラウドPBXの導入で失敗しがちなのが、「システムだけを提供し、回線はお客様で用意してください」というベンダーを選んでしまうことです。トラブルが起きた際に「回線の問題か、システムの問題か」で責任の切り分けが難しくなります。インターネット回線の手配から、ルーター設定、社内LANの構築まで、インフラ全体をトータルでサポートできるベンダーを選ぶことが重要です。
帯域の計算や理論上の数値が問題なくても、実際の社内ネットワーク環境でどのような音質になるかは、使ってみなければわかりません。本格導入の前に、必ず自社の環境でトライアル(無料お試し)を実施し、昼休みなどの回線が混み合う時間帯でも問題なく通話できるかを確認してください。
安定した通信品質と柔軟な働き方を両立させたい企業様には、『ArmZ Cloud(アームズ クラウド)』の導入がおすすめです。
ArmZ Cloudは、働く環境の変化や社内外の多様なシーンに柔軟に対応できる音声コミュニケーション基盤です。デバイス機器の利活用を前提とした未来志向のSaaS型サービスとして設計されており、スマートフォンとPCを無駄なくシームレスに活用するハイブリッドワークの実現に大きく貢献します。
また、ビジネスの根幹を支える「通話時の高音質」と「強固な暗号化セキュリティ」を両立させているため、場所を問わず常にセキュアで快適な通信環境を維持することが可能です。
さらに、ArmZ Cloudでは本格的な導入の前に、実際の通話品質や操作感を体験していただける無料のトライアル環境もご用意しています。「まずは自社のネットワーク環境でクリアな通話ができるか試してみたい」という企業様は、ぜひお気軽にお申し込みください。
ArmZ Cloudの詳細はこちら
https://www.fusodentsu.co.jp/service/armzcloud.html
ArmZ Cloudのトライアルお申込みはこちら
https://www.fusodentsu.co.jp/service/document_all/form_ArmZCloudTrial.html
クラウドPBXを快適に利用するためには、「1通話あたり100kbps」という基本的な帯域の確保に加え、遅延やパケットロスといったネットワーク品質への目配りが不可欠です。社内の同時通話数に見合った回線スペックの選定や、QoSの設定、有線LANの活用など、総合的なネットワーク整備を行うことで、通話トラブルを未然に防ぐことができます。
もし自社のネットワーク状況や必要な帯域に不安がある場合は、システム単体だけでなく、インフラ構築に強いプロフェッショナルに相談して進めるのが最も安心できる近道といえるでしょう。

扶桑電通株式会社 ビジネス推進本部
マーケティングセンター チーフ
長年にわたり、国内大手ITグループにてIT製品のプロモーションやプリセールス業務に従事。GIS、BI、セキュリティ、RPAなど多岐にわたるソリューションのデモンストレーションやセミナー講師を経験。お客様の目線に立ち、分かりやすく魅力的に伝えることを信念としている。
現在は、扶桑電通株式会社にてチーフを務め、クラウドPBXをはじめとする自社ソリューションの魅力を多角的に発信。ナレーター経験で培った表現力と、数多くのデモ実施で得た現場感覚を武器に、お客様の課題解決に繋がるDX提案を推進している。