扶桑電通株式会社
「お客様は神様」という考え方が通用しなくなり、理不尽な要求を繰り返すカスタマーハラスメント(カスハラ)が社会問題化しています。特に顔が見えない電話対応においては、対面よりも攻撃がエスカレートしやすく、従業員のメンタルヘルスを損なう重大なリスクとなります。
本記事では、理不尽な要求や暴言を繰り返す相手に対し、組織としてどう毅然と対処すべきかを解説します。カスハラの判断基準から、マニュアル作成、自動録音やIVR(自動音声応答)を活用した最先端の抑止策、さらには電話を切るタイミングや法的措置まで、現場ですぐに活用できる具体的な対策を網羅しました。従業員を守り、企業としての健全な運営体制を構築するための解決策が必ず見つかります。
近年、顧客からの理不尽な要求や暴言によって従業員が精神的な苦痛を受ける「カスタマーハラスメント(カスハラ)」は、大手企業だけでなく中小企業にとっても避けて通れない重大な経営課題です。企業には、労働契約法に基づき、従業員の安全に配慮する「安全配慮義務」が課せられており、放置すれば損害賠償責任を問われるリスクもあります。
さらに現在、国レベルでも労働施策総合推進法の指針見直しを含め、カスハラ対策の「完全義務化」に向けた法改正の議論が急速に進んでいます。東京都をはじめとする地方自治体での「カスハラ防止条例」の施行も相次いでおり、早期の体制構築はもはや必須と言えます。
電話対応におけるカスハラは、単なる「クレーム」の域を超え、従業員の尊厳を傷つけたり業務を著しく阻害したりする行為を指します。
厚生労働省が公開している「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」によると、顧客の要求内容が妥当性を欠く場合や、手段が社会通念上不相当である場合にカスハラと認定されます。以下に、電話対応で頻発する悪質な言動を整理しました。
| カテゴリ | 具体的な言動の例 |
|---|---|
| 暴言・脅迫 | 「殺すぞ」「ネットで晒す」「無能」といった人格否定や脅し |
| 長時間拘束 | 用件が済んでいるにもかかわらず、数時間にわたり電話を切らせない |
| 過度な要求 | 根拠のない賠償金請求や、本来対応不可なサービス・特別扱いを強要する |
| セクシャルハラスメント | 電話越しに卑猥な言葉を投げかける、プライベートな交際を迫る |
企業がカスハラを適切に判断するためには、「顧客の要求内容の妥当性」と「要求手段の相当性」の二軸で評価することが重要です。たとえ顧客側の指摘(商品不良など)に正当な理由があったとしても、それを伝える手段が暴力的な言動や威圧的な態度であれば、それはハラスメントに該当します。
判断を誤ると、従業員は「自分が悪いのではないか」と自責の念に駆られ、離職やメンタルヘルス不調を引き起こすリスクが高まります。
各業界団体や有識者が提唱するガイドラインでも、従業員を守るための組織的な対応が強調されています。判断に迷う場合は個人の判断に委ねるのではなく、あらかじめ定めたフローに従って上司や管理部門へエスカレーションする体制を構築することが、組織として従業員を守るための第一歩となります。感情的なやり取りに巻き込まれる前に、客観的な基準に基づいて「これはカスハラである」と認識できる環境を整えましょう。
個人の対応能力に依存するのではなく、組織全体でハラスメントを未然に防ぐための仕組みを構築することが不可欠です。
カスハラ対応の第一歩は、誰が対応しても一定の品質を保てる標準化されたマニュアルの整備です。感情的な要求や理不尽な言いがかりに対して、どのような言葉遣いで、どこまで対応すべきかの境界線を明確に定義しておく必要があります。厚生労働省のマニュアルを参考に、自社の実情に合わせた具体的なスクリプトを作成しましょう。
また、現場担当者だけで問題を抱え込ませないため、対応の段階に応じた指揮命令系統を確立しておくことが推奨されます。
| 段階 | 対応の目安 | 管理者(上長)の役割 |
|---|---|---|
| 初期対応 | 担当者がマニュアルに基づき傾聴と事実確認を行う | 状況を適宜モニタリング・把握する |
| エスカレーション | 暴言や過度な要求が発生した時点で即座に交代する | 電話を代わり、責任者として毅然と対応する |
| 事後対応 | 対応内容を記録し、再発防止策を検討する | 従業員のメンタルケアと法的措置の判断を行う |
ハラスメントの高度化に伴い、従来のビジネスフォンの録音機能だけでは対応しきれないケースが増えています。電話窓口は周囲の目がないため顧客の言動が過激化しやすく、また「言った・言わない」の水掛け論に陥りがちです。
現場の担当者が暴言を一人で抱え込んでしまうブラックボックス化を防ぎ、従業員を確実に守るためには、以下のような優れたハラスメント抑止・管理機能を備えた一歩進んだ通話録音システムの導入が極めて効果的です。
また、官公庁や医療機関、機密性の高い顧客情報を扱う環境においては、データが外部のクラウド等に流出するリスクを避けるため、社内サーバーで安全にデータを一元管理できる「オンプレミス(自社運用)型」のシステムを選ぶこと、そして有事の際にも安心な24時間365日の保守サポート体制がある信頼性の高いITパートナーから導入することが、確実な企業防衛の鍵となります。
電話口で理不尽な要求や暴言を受けた際、感情的にならず冷静かつ毅然と対処することが、被害を最小限に抑える鍵です。
カスハラ電話を受けた際、最も避けるべきは相手のペースに巻き込まれ、感情的な応酬になることです。相手が怒鳴り散らしている場合でも、まずは深呼吸をして、相手の要求が「何に対するものなのか」という事実関係のみを客観的に聞き取ることに集中してください。相手の暴言に反応せず、淡々とメモを取る(あるいはシステムで自動録音されているという安心感を持つ)姿勢が重要です。
要求の内容が不当であると判断した場合は、曖昧な返答を避け、毅然とした態度で断る必要があります。「土下座の強要」や「長時間にわたる拘束」、「従業員個人への攻撃」などは、厚生労働省の指針に基づき、明確に拒絶の意思を示さなければなりません。
| 要求の種類 | 対応方針 |
|---|---|
| 事実無根の賠償請求 | 根拠がない旨を伝え、調査の必要性を説明して一旦保留にする |
| 担当者個人への謝罪要求 | 組織としての対応である旨を強調し、個人への攻撃は受け付けないと断る |
| 過剰なサービス要求 | 提供可能な範囲を超えていることを明確に伝え、対応できない旨を告げる |
相手の暴言が止まらない場合や、同じ内容を執拗に繰り返して業務が妨害されている場合は、電話を終了させる権利が企業にはあります。「これ以上、同じ内容を繰り返されるのであれば電話を切らせていただきます」と事前に通告し、それでも改善されない場合は毅然と切断してください。
電話を切った後は、速やかに上司へ報告し、録音データとともに状況を共有してください。個人の判断で対応を完結させず、必ず組織として記録を残すことが、二次被害を防ぐための最善策となります。
迅速かつ組織的な事後ケアを行うことで、二次被害や従業員の精神的疾患・離職を防ぎます。
カスハラ発生後、最も重要なのは「従業員個人の問題」とせず、「会社全体の問題」として対応することです。
従業員が「会社は自分を確実に守ってくれる」という安心感を持てる環境(心理的安全性の確保)が、離職防止の最大の鍵となります。
度重なる迷惑電話や、身体的・精神的な脅迫を伴う悪質なケースに対しては、会社として毅然とした法的措置を検討する必要があります。個人の判断で対応させず、必ず法務部門や顧問弁護士、警察と連携してください。
法的措置(損害賠償請求や不法行為の証明、業務妨害罪での告発など)を講じる際は、システムに蓄積された「通話録音データ」や「正確な通話履歴」が最大の客観的証拠となります。会社が先頭に立って法的対応を行う姿勢を見せることは、悪質なクレーマーに対する強い抑止力となるだけでなく、従業員の信頼を勝ち取るためにも極めて重要です。
カスハラ対策は、一度マニュアルを作って終わりではありません。
管理職は、カスハラが発生した際に即座に現場へ介入し、従業員を顧客から引き離す役割を担うべきです。組織として「理不尽な要求には応じない」「何かあれば管理職が責任を持つ」という姿勢を明確に示すことが、現場の安心感に直結します。
カスハラの定義や対応方法は、日々アップデートされています。定期的なロールプレイング研修などを通じて、最新の法的な知見の共有や、緊急時の対応手順を身体で覚える機会を設けましょう。「従業員自身の心身を守ることが、結果として企業の存続を守ることにつながる」という考え方を浸透させることが、強固な組織風土の構築につながります。
電話対応におけるカスハラは、放置すれば従業員のメンタルヘルスを損ない、優秀な人材の離職にもつながる深刻な経営リスクです。重要なのは、現場の担当者に我慢を強いる「現場任せ」を完全に脱却し、組織全体で毅然とした対応をとることです。
まずはエスカレーション体制や対応マニュアルなどのルールを整備すると同時に、全通話自動録音やIVR(自動音声応答)、着信拒否機能を備えた先進的な電話システムを導入し、テクノロジーの盾で従業員をガードする仕組みを作りましょう。
万が一の際は、確保した確実な録音データを証拠として、弁護士や警察などの外部機関とも速やかに連携し、組織として毅然とした態度で臨んでください。インフラの守りを固め、誰もが安心して笑顔で働ける職場環境を今すぐ実現しましょう。

扶桑電通株式会社 ビジネス推進本部
マーケティングセンター チーフ
長年にわたり、国内大手ITグループにてIT製品のプロモーションやプリセールス業務に従事。GIS、BI、セキュリティ、RPAなど多岐にわたるソリューションのデモンストレーションやセミナー講師を経験。お客様の目線に立ち、分かりやすく魅力的に伝えることを信念としている。
現在は、扶桑電通株式会社にてチーフを務め、クラウドPBXをはじめとする自社ソリューションの魅力を多角的に発信。ナレーター経験で培った表現力と、数多くのデモ実施で得た現場感覚を武器に、お客様の課題解決に繋がるDX提案を推進している。